Adobe Web SDK移行に伴う Adobe Analytics 処理ルール実装の変更点

はじめに

Adobe Analytics を実装する方法として以前はAppMeasurementが用いられていましたが、新しいAdobe Web SDKへの移行にともないレポートスイートの処理ルールの実装について違いをまとめました。
処理ルール自体は変わらないですが、入力データの形式とデバッグ方法が大きく変わります。

変更点について

まず、ルールが参照する「入力データ」の違いについてまとめました。
項目 AppMeasurement Web SDK
データの送信先 Adobe Analyticsデータ収集サーバーに直接送信。 Adobe Experience Platform Edge Networkを経由して送信。
変数の形式 従来のAnalytics変数 (eVar1、prop1、campaignなど) を使用。 XDM (Experience Data Model) スキーマに基づく標準化されたデータ構造を使用。
処理ルールへの入力 クライアントから送信された従来の変数。 Edge Networkでマッピング・変換された従来の変数。
データの取得方法 JavaScriptコードやタグ拡張機能で変数に直接値をセットする。 XDM形式でデータを収集し、データストリームでAnalytics変数にマッピングする。
XDM(Experience Data Model) はAdobe Experience Platform全体で利用される統一されたデータスキーマです。
具体的な変化としては、
  1. XDMデータの利用: Web SDKはデータをXDM形式で収集し、Edge Networkに送信します。例えば、トラッキングコードはweb.webInteraction.linkClicks.trackingCodeのようなXDMフィールドに入ります。
  2. マッピング: Adobe Analyticsがルールで参照できるように、これらのXDMフィールドは、データストリームの設定またはデータ要素内で、従来のAnalytics変数(例: campaigneVar1)にマッピングされる必要があります。
  3. ルール内での参照: ルール自体は、このマッピングされた後の従来の変数名(例: 「キャンペーン変数に値が含まれる」)を参照することになります。
Web SDKの導入前後で、Adobe Analyticsの管理画面内にある処理ルールの設定方法(UI)や、ルールの処理ロジック(優先順位、条件の設定)に本質的な変更はありません。
 
次に、デバッグ/検証方法の違いについては、
項目 AppMeasurement Web SDK
デバッグのしやすさ 高い。クライアントサイドのネットワークリクエスト (イメージリクエスト) で、処理ルール適用前のすべての変数を直接確認できる。 低い。データはXDMとしてEdge Networkに送信されるため、従来のイメージリクエスト形式で見ることができず、処理ルール適用後のデータ (レポート) を見る必要がある。
検証ツール AppMeasurementデバッガー、ブラウザネットワークタブ Experience Platform Debugger (Edge Networkでの処理を確認) とAnalyticsレポート (最終結果を確認) の両方が必要。
Web SDKの場合、処理ルールが正しく機能しているかを確認するには、最終的なレポートデータ(例えば、eVarのブレイクダウンレポート)を参照するか、Customer Journey AnalyticsなどEdge Networkと連携するツールでデータストリームの処理を確認する必要があります。従来のAdobe Debuggerでは、処理ルール適用後の変数値を確認できません。

Web SDKにおけるデータマッピングの推奨アプローチ

Web SDKの導入は、データ収集アーキテクチャ全体を統合するAdobe Experience Platformの利用を前提としているため、処理ルールに頼りすぎる実装は推奨されなくなっています
  • 推奨されない行為: Web SDKで収集したXDMデータを、Analytics処理ルールで複雑に変換・加工して利用すること。
  • 推奨される行為: 可能な限り、タグ拡張機能やデータストリームのマッピング機能を使用して、XDMフィールドをAnalytics変数にマッピングし、処理ルールでの作業を最小限に抑えること。
これは、処理ルールがAdobe Analytics専用の機能であるのに対し、XDMデータはAdobe Experience Platform全体の標準であり、将来的にはCustomer Journey Analytics (CJA) やReal-Time CDPなど、他のPlatformサービスで共通して利用されるべきだからです。

まとめ

Web SDKへの移行における処理ルールの要点は、「設定は同じ、入力データが変わる」ことです。
  1. ルールロジックは不変: Analytics管理画面での処理ルール(優先順位や条件)は、AppMeasurement時代と変わりません。
  2. データ形式はXDMへ: クライアントから送られるデータが、従来の変数からXDM (Experience Data Model) 形式に変わります。
  3. 推奨アプローチ: 処理ルールに頼らず、データストリームの設定でXDMをAnalytics変数にマッピング(変換)し、ロジックを可能な限りデータ送信前に完結させる手法が推奨されます。
  4. デバッグの変更: 従来のネットワークリクエストではなく、Experience Platform Debuggerと最終レポートでの検証が必須となります。

参考資料

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