SQL不要?Gemini CLIでGA4データを「自然言語」で分析する方法

はじめに

「GA4(Google Analytics 4)のデータをもっと自由に分析したいが、SQLが書けないためエンジニアに依頼するしかない」
「BigQueryにデータを溜めているものの、活用しきれていない」
多くの企業のマーケティング担当者やDX推進担当者が、このような課題を抱えています。データドリブンな意思決定が重要視される今、分析にかかる「技術的なハードル」はビジネスのスピードを鈍化させる大きな要因です。
しかし、Google Cloudが提供する「Gemini CLI」とその拡張機能を活用すれば、この状況は一変します。ターミナルで「今月注力すべきチャネルは?」と自然言語で問いかけるだけで、AIがSQLを生成・実行し、さらには分析結果の解釈まで行ってくれるのです。
本記事では、Implement Digitalのコンサルタントが実際にGemini CLIのBigQuery拡張機能を試し、GA4のサンプルデータを用いて「自然言語によるデータ分析」を実践した様子をレポートします。プロの視点から見たメリットや活用ポイントも解説しますので、ぜひ貴社のデータ活用にお役立てください。

Gemini CLI と BigQuery拡張機能とは?

開発者のためのAIアシスタント「Gemini CLI」

Gemini CLIは、Googleが提供するオープンソースの会話型AIエージェントです。これは単なるチャットボットではなく、ターミナル(コマンドライン)上で動作し、開発やデータ探索を支援するツールです。最大の特徴は「拡張機能(Extensions)」です。これにより、Gemini CLIはGoogle Cloudのサービスや外部ツールと接続し、APIを理解して操作することが可能になります 。

BigQueryデータを「会話」で操作する

今回注目するのは、BigQuery向けの拡張機能です。これには主に以下の2種類があります。
  1. BigQuery データ分析拡張機能
    自然言語の質問に基づいてSQLクエリを作成・実行し、テーブル情報の取得や予測モデルの生成などを行います。
  2. BigQuery 会話分析拡張機能
    サーバーサイドの分析エージェントを使用し、データからより高度なインサイト(洞察)や推奨事項を提示します。
これらを活用することで、SQLを一行も書かずに、まるで同僚に尋ねるようにデータ分析が可能になります。

【実践】GA4データを自然言語で分析してみる

実際にGemini CLIをセットアップし、Googleが提供しているGA4のサンプルデータ(bigquery-public-data.google_analytics_sample)を分析してみましょう。

準備(インストールと設定)

まずは環境の準備です。Gemini CLIをインストールし、対象となるGoogle Cloudプロジェクトを設定します。その後、以下のコマンドでBigQuery拡張機能をインストールします。
				
					Bash

# BigQuery 会話分析拡張機能のインストール例
gemini extensions install https://github.com/gemini-cli-extensions/bigquery-conversational-analytics

				
			
これで、ターミナルから対話形式で分析を始める準備が整いました。
※実際の利用には、BigQueryユーザーやGemini for Google CloudユーザーなどのIAMロール権限が必要です。

ケーススタディ:注力すべきチャネルを特定する

マーケティングにおいて「どのチャネルが効果的か」は常に重要な問いです。
従来の分析では、SQLでチャネルごとのセッション数やコンバージョン数を集計し、自分で比較する必要がありました。
Gemini CLIの会話分析ツール ask_data_insights を使うと、以下のようなプロンプト(指示)だけで分析が完結します。
				
					プロンプト例:
ask_data_insightsとGAサンプルデータを使用して、注力すべきチャネルとその理由を教えてください
				
			

分析結果とGeminiの回答

Gemini CLIは、指定されたテーブルを分析し、以下のような具体的な推奨事項を返しました 。
  1. リファラル(Referral)トラフィックを優先する
    理由: 訪問数は最多ではないものの、最も高い収益とトランザクション数を記録しています。これは、リファラル経由のユーザーが非常に質が高く、コンバージョンしやすいことを示しています 。
    推奨アクション: 上位の参照元Webサイトを特定し、関係を強化すること。また、提携先となる類似のWebサイトを探すこと。
  2. ダイレクト(Direct)トラフィックを育成する
    理由: 2番目に高い収益源です。これはリピーターやブランドをよく知るユーザーである可能性が高いです。

このように、単なる数字の羅列ではなく、「なぜ重要か(Why)」と「次になにをすべきか(Action)」まで提示してくれる点が、従来のツールとは一線を画しています。

Implement Digitalの視点:データ活用の民主化

この検証を通じて、私たちはデータ分析のあり方が大きく変わると確信しました。

SQLの壁を超えた「思考の直結」

これまでは「ビジネスの疑問」→「SQLへの翻訳(エンジニア作業)」→「結果の解釈」というプロセスが必要でした。Gemini CLIはこの中間プロセスをAIが代行するため、マーケターは「ビジネスの疑問」と「結果の解釈・アクション」に集中できます。

高度な分析機能の活用

単なる集計だけでなく、今回の拡張機能には「時系列予測(bigquery_forecast)」や「貢献度分析(analyze_contribution)」といった高度なツールも含まれています。
例えば、「来期の売上予測」や「収益に対する地域ごとの貢献度」といった複雑な問いに対しても、自然言語でアプローチ可能です。

注意点とプロの役割

一方で、AIが出力した結果をそのまま鵜呑みにせず、文脈を理解して判断することは依然として人間の役割です。また、企業独自のデータ定義やKPIに合わせたカスタマイズを行うには、適切なデータ基盤の設計が不可欠です。

まとめ

Gemini CLIとBigQuery拡張機能の活用により、GA4データの分析は劇的に効率化されます。
 SQL不要: 自然言語でデータに問いかけることができる。
 インサイトの取得: ask_data_insights などのツールで、データの背景や推奨アクションまで提示される。
 スピードアップ: データの探索から意思決定までの時間を大幅に短縮できる。
これは、データ活用の民主化に向けた大きな一歩です。しかし、ツールを導入するだけでは成果は出ません。「どのような問いを投げかけるか」「得られたインサイトをどう戦略に落とし込むか」こそが重要です。
ご興味がありましたらお問い合わせください
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